小田原漆器の歴史
平安時代、文徳天皇の第一皇子、惟喬親王と親王を奉るロクロ集団が今の小田原市早川のあたりに住み、箱根・相模の豊富な木材を利用して器を作ったのが始まりとされています。
室町時代後期、北条氏の加護のもと“塗り”の技術も向上し、漆器の産地として確立されてきました。
当時、作られた日本史上の名椀『芹椀』は、北条一族の菩提寺である、早雲寺(箱根湯本)に所蔵されています。さらに江戸時代になると庶民の生活用具として、また東海道宿の土産品として、様々に重宝されて現在に至っています。
昭和59年には『伝統的工芸品』として国の認定を受けています。
小田原漆器の特徴
国産、欅(けやき)の木を主に利用しています。材質が強固で、ゆがみが少なく、木目が美しいため、椀・盆などに最適な素材です。
塗りは素材を生かすため、木目が透けて見えてくる「摺り漆塗り」、「木地呂漆塗り」が代表的なものとなります。
小田原漆器とうるし
漆の木に傷をつけて出る樹液が『漆』です。自分の傷を治すために出す液ですから、抗菌・耐水・断熱防腐性に優れています。 集めた樹液を精製した基本の漆を『生漆(きうるし)』と言い、朱や黒などの色漆は、生漆に手を加えて作られています。
小田原漆器は何度でも塗りなおしがききます。繰り返し塗りなおしていくことで、漆がプラスされますので、より深い味わいになっていきます。
塗りなおしにつきましてはお気軽にご相談ください。
制作過程
日本で産まれた欅(けやき)の木です。
お皿やお椀や鉢になるのを待っている状態です。はじめは湿って白っぽかった木は、乾燥室や日陰に置くことで、だんだんと赤みをおびてしっかりとしていきます。
しっかり乾燥したところで刃物をかけていきます。 刃物とはいっても様々な種類があります。轆轤(ろくろ)という機械では、回転体のもの(お椀など丸いもの)になりますし、ルーターという機械を使うと変形のもの(箱や角のお盆など)になります。
左は轆轤(ろくろ)という機械です。 これを回転させ、職人さんが奥に見える刃物をあててひとつひとつくり抜いていきます。
ルーターで梅型のお盆を削ったあと、表面をペーパーで磨いてなめらかにきれいにします。 こうして、やっと漆を塗る工程にはいれます。手の感覚で磨きの具合をはかりますから、まさに職人技です。
こちらはルーターでくり抜いた重箱です。この白木の状態から、漆を何度もかけて仕上げます。 どんな風に仕上がっているのかは、ぜひ店頭や催事場でご覧ください。何種類もありますので、塗りによる表情の違いをお楽しみいただけるはずです。
ここは風呂といって、漆を塗って乾かす部屋のようなところです。完成までに何回も漆をかけますので、風呂にある漆器はまだまだ製作中の段階です。 漆は塗る回数が多いほうが丈夫になりますし、使い込んだときのあじわいや深みも増してきます。
轆轤(ろくろ)を回している映像です。 徐々にお椀の形になっていきます。 |